「西の魔女が死んだ」の感想

梨木香歩先生の「西の魔女が死んだ」を読んだので感想を書きます。

この本は結構古くて、平成13年に書かれたものなんですよね。

映画化されているし、それに毎年夏になると本屋さんに平積みされていて、いつか読んでみようと思っていました。

 

 
とはいっても、忙しい時期が続き、結局今年まで読めていなかったんですよね。でもまた手にとってみたのは、梨木先生のエッセイ本「春になったら苺を摘みに」を読んだからなんです。
 
 
このエッセイ、タイトルから察するに、自然を愛する方が、季節を楽しみながら暮らしていく様子を描いているだろうなと思っていました。でも読んでみると、ちょっと違っていました。
イギリスに留学した梨木先生は、一人の魅力的なアメリカ出身の婦人と出会います。エッセイは何故かこの婦人を中心に描かれているんです。彼女は下宿を経営していて、そこに様々な立場、人種の人達を住ませています。梨木先生もその一人。
当然全てが上手くいくわけではなくて、婦人は犯罪に巻き込まれたり、下宿人に使用人の様に働かせたりさせられたりして、結構苦労しているんですよね。
それでも追い出さないんです。あるがままを受け入れて、上手くやっていける時は一緒に楽しむ。
自分と他人は価値観が違うのは当たり前だという事を前提にしてるけど、それなりに付き合えていけるんです。コテコテの日本人だと、自分と価値観が違う人を排除しがちなので、筆者はとても新鮮に感じたのかもしれません。
 
で、このエッセイを読んでから、「西の魔女が死んだ」を読んでみました。
読むまでは、児童文学に近いのか? タイトルから察するとファンタジー要素があるのか? 等と思っていました。
でも全く違っていましたねw むしろ、日本社会に呪詛のように根強く残る悪癖を描いていました。
 
(あらすじ)
主人公マイは中学校で、仲間外れにされ、一か月程祖母の家で過ごす事になりました。
祖母はイギリス人で、祖先が日本人を好きだったから、自分も来てみたというくらい行動力のある人です。
祖母は自然と共に、とても健康的に暮らしています。家庭菜園で採れた野菜、家で飼う鶏の卵、洗濯物は手洗い。
マイはその暮らしに憧れるのですが、一点気に入らない事があります。それは向かいに住む大人の男ゲンジさん。彼は彼は祖母を手伝ってくれたりはするのですが、ごみ収集の日にエロ本を捨てたり、祖母の敷地内で不審な行動をしたり、祖母の陰口をたたいたりなど、良い行動をとりません。
それについて、祖母に真っ向から意見したマイに対し、祖母は叩いてしまいます。
 
(感想)
読みながら、不思議な話だな、と思いました。本文に描かれる田舎暮らしは、どういうわけか陰鬱な雰囲気がそこかしらに散りばめられていて、アチコチで見かける感想の様に、素敵な感じではありません。その陰りを、自分は梨木先生の文体の癖なのかと思っていたんです。ですが、最後まで読んで気付きました。
マイが考えている全てが、祖母が今まで考えてきた事なんだと。
だから自由な暮らしの中に、孤独が潜んでいる。
 
マイは、クラスに溶け込むために媚びだりするのが嫌でした。だから、超然とした祖母が好きだったんです。ですが、その祖母も日本で暮らすうちに他人に譲歩してきたんだと思います。その辺はゲンジさんとの付き合い方から察っせます。
素行の悪さを許容せざるをえないのは、暮らしていく上で頼らなければならないからです。なぜそんな男に協力してもらわねばならないかというと、周囲の人達にはじかれてしまっているからなんだと思います。
外国出身の老婆と不審な男。
マイが祖母の家に滞在している間、ゲンジさん以外には誰も訪れていないんですよね。
それに気が付いて、ちょっとゾッとしました。。。
 
マイも無意識のうちにそこに気が付いたのでしょう。生きていくには、自分から歩みよる事が必要なんだと。それはどこに住んでても、どの組織に属してても同じだと。
 
たぶん祖母の方もマイから影響を受けています。ゲンジさんと土地の事等をちゃんと話し合ったのでしょう。葬式の日、ゲンジさんが以前よりも祖母に対して敬意を払っていました。それはたぶん、面と向かって意見をぶつけたからだと思うんです。
 
深い本だなぁ、と思います。でも絶対読んだ方がいいですよ!